2008年01月10日

“今日の出来事”

「昭和二十一年二月十七日」

今日の出来事・・・・・

突然お金が自由に使えなくなった。日本中、一人残らずである。

なにせ「一人残らず」なのだから困るようで、困らない。
もっとも、いつの世も、そう決めた「エライ」連中はその限りではないのだろうが・・・・・

とにかく、皆が一緒なのだ。
もし自分だけ金が無くなったのなら、それは「貧乏になっちまった」、ということだが、
でも一斉にそうなったから、金持ちも貧乏人も居なくなった、ということになってしまった。
妙な体験である。

とにかくあらゆる預貯金が全て封鎖され、一銭も引き出すことが出来ないのだ。
誰も彼もが面食らっている。

“昭和二十一年二月十七日『金融緊急措置令』が出たのである。

それは、「新円切替」というものらしいが、そうなるとどうなるのかが、もう一つ良く分からない。
その点が何とも不安だった(とか)。

今、手元にある紙幣も3月3日以降は通用しなくなる。
2月25日から3月7日までの間に、今の紙幣は全て新券と交換しなければならない。
そしてその交換額は、なんと「一人百円まで」なのだ。

皆、慌てた。人々は物に交換しようとするが、商人は売り惜しみをする。
そりゃそうだ。品物を売って、金を貰っても一定額以上は使えなくなるというのだから。
商品として温存して置いたほうが得に決まってる。

新円に切り替わったあと売れば、新円が入ることになる。そして新円は自由に使える。
あれやこれやで商店から一斉に物が消えた。
つまり利敏い商人は「売り惜しみ」、商品を隠してしまったのである。

困ったのは闇屋だ!!

しこたま儲けた金が全部パアになる。
いい気味だ、という気がしないでもない・・・・・・
かくて一時的にインフレは止まることになった。

ところがこの預貯金封鎖、五円以下が除外されたものだから大騒ぎだ。
銭湯も魚屋も釣銭がない。皆小銭を抱え込むから出回わらないのだ。
止むを得ず各商店では、その店だけで通用する券を出して急場を凌ぐ。

“2月25日”を過ぎて新券に交換に行ったら、新券の印刷が間に合わないらしく代わりに証紙を呉れた。
今の政府、役所とやることは変わらない。とにかく好い加減・・・・・・
その証紙をこれまでの「札に貼って」使えというのである。

新券には十円札と百円札しかない。やがて新十円札なるものが出回わったが、そのデザインを見て日本中が呆れかえった。

新円の十円札の図案は「米国」と言う文字になっていた。

いくら占領下とは言え、アメリカに合併されて州になった訳ではない。
一応、政府も国会もある日本国なのに、何故お札が「米国」なのだろう。

新多昭二著“敗戦から再建までの長い日々”引用。


こんな時代が今なら、因みに『クローズアップ現代』はそれをどうドキュメントするのだろう・・・・・

これは僕の父母、姉たちの時代の話。
しかしそれは現代とは比べるべくも無い時代だったと想像する。

「労働して、夫婦仲睦まじくしてやがて子ができて、成長を楽しみに、一生懸命働く。
それが私の若いころの男性の姿だった。」

僕の場合もあれから30余年・・・・・
そんな娘たちにも子どもができて、
僕も、僕のの父母たちの道程を反芻している。

僕らが育った時代・・・・・・・
戦争に負けて、何もかも失って、全く新しくやり直したそんな時代。

そして高速道路ができ、新幹線が走り、空港ができて、そんな僕らまでがなんでもないように海外に出かける。
その焦土の街には高層ビルが林立し、
商店と言う商店にモノは溢れかえり、真っ暗だったそこには24時間、四六時中、煌々とする。

何もかも不自由はなくなった・・・・・

暑いといえばどこの家にもエアーコンディションが。
寒いといえば、エアコン、ハイテクのストーブが。
腹が空いたといえば、いつでもどこでもその空腹は満足させられる。

そんな素晴らしい時代が・・・・・・
一体どうしたと言うのだ。
なにが不満だと言うのだ、なにに怒っているのだ・・・・・

子捨て、子殺しは僕らの子どもたち世代。
そして親殺しが近頃、50代が80代の親を・・・・・僕らの世代・・・・・

そして、あれほど誕生を喜んだ子どもに殺される僕ら世代の親もいる。
あれほど愛し合って暮らしてきたのに、殺しあうかつての恋人同士がいる・・・・・・

時間てそんなに残酷なモノなのか。

でも、“昭和二十一年二月~三月”

なにもかも失わなければ僕らは気づかないのだろうか・・・・・
だったら、何もかも壊れてしまった方がいいのかも知れない。

ひとつ、ひとつ、間引きされるように壊れていくくらいなら。



Posted by 昭和24歳  at 14:00 │Comments(0)

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