2020年03月03日

追憶の日々に

追憶の日々に
追憶の日々に

挫折、僕は渋谷のとあるライブハウスでこのメロディーを口ずさんでいた。

渋谷のライブハウス、その「イマジン」は何度やってもダメ出しを食らった。

「あなたやる気あるの?

その容赦のない叱咤には返す言葉もなく僕はそこを飛び出した...

その年の夏に軽井沢で友人のショップを手伝った。

万平ホテルにジョン・レノンがオノヨーコと暮らしているとかの噂が飛び交った頃のこと。

全ての「時代の喧騒」が去った静けさがそこの避暑地には今のような猥雑さはなかった。
東京の富豪たちのために築地・銀座・赤坂のレストラン、料亭がしっかりとした出店を構え夜ともなれば眩いばかりの高級車がそこに鈴なりになり冷え冷えとした情景の佇まいを見せていた。

全ての「時代の喧騒」が...

ベトナム戦争も終わり、学生運動も、そして浅間山荘の赤軍事件もその少し前にまるでなごともなかったかのように新しい時を刻み始めていた。

軽井沢銀座とはいっても郵便局から向こうはほとんど何もなかった。

網の目のように走る別荘地の小道からはそれこそ銀幕から抜け出てきたかと見紛うばかりの人が行き交うそこ。
友人が借りていたショップは軽井沢銀座入り口、100メートルほど手前のしもた屋の玄関。
それでも、物珍しそうにそうした瀟洒ないでたちの人たちが買い物をしてくれたていた。
とにかく手作りの皮鞄専門の店だったが当時で10万円前後のボストンが日に2、3個は売れた。

追憶の日々に

「ジョン・レノンがあそこで飯を食っていたよ」

と、ベントレーかなんかから降りてきた中年の紳士がそう言っていたが、なにもかもが無関心の時代に僕らもそんな一人だった。

どうしてだろうか...

ジョン・レノンといえばあのビートルズ、世界でトップレベルのミュージシャンなのに。
あの時代に「へ~~~」というだけで、「だから」という感じだった。

どんなわけかは知らないが、ジョン・レノン甚く日本を気に入っていたらしい。
育ちがいいかどうかは別にしての日本人の妻「オノ・ヨーコ」。
僕らにしてもそうだが、あの時代アメリカにかぶれにかぶれても日本人、木造家屋、土壁の家屋、畳の生活の和洋折衷をものの見事に棲み分けていたように思える。

当時のバンドメンバーで友人だったアメリカ人夫婦(学生)が経堂で生活していた。
彼らは経堂駅近くの戸建てを借り、まさに「和風」というのだろうか、
可笑しいほどにセンシティブとでも言うんだろうか畳の部屋に絨毯を敷いて靴を履いたまま「和風生活」を楽しんでいた。

そう、昭和47年...

それは今の東京ではない。
それは僕の生まれ育った高崎でもそうだったが、実に「しっとり」した芳醇な情景が、佇まいがそこかしこにあった。

12月、ダコタハウスの入り口で「ジョン・レノン」は凶弾に倒れた。
それは、日本の戦後というか第二次世界大戦後のひとつの時代の終わりを象徴していたようだった。

アメリカ人の夫婦を通して知ったことだが「ロック」は全て、宗教音楽なんだそうだ。
プレスリーの歌う曲も、ライチャーズ・ブラザースの歌う曲も全てが「聖書」に基づく楽曲だという。
もちろん、ビートルズの曲の全てが聖書を皮肉ったり、聖書を崇めたりの曲なんだと...

ジョン・レノンの啓示的な、その意味では聖書を超えかねない楽曲「イマジン」。
いよいよ次の戦争の準備をしていた時の為政者たちにとっては、ジョン・レノンが創りつづけるであろう、その宗教的博愛の楽曲が許せなかったのかも知れない。

昭和47年。
追憶の日々に

僕らがなすべき時代はそこにあるのかもしれない。

その10年ほど前までは都内を路面電車が走り、トロリーバスが走り新宿副都心には未だ超高層ビルの欠片も見えなかった。

それを思うと時代は創られたのではなく、壊されたのかも知れない...



追憶の日々に
 



Posted by 昭和24歳  at 12:16 │Comments(0)

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