2011年07月10日

【壊滅する商店街】盛岡市の場合

【壊滅する商店街】
盛岡市の場合


【壊滅する商店街】盛岡市の場合


壊滅する商店街

 ところで、そうしたことの結果、いま日本社会で何が進んでいるのでしょうか。もう少し具体的な現実をみていきましょう。

 みなさん方は多分、本日は雇用・労働という、限られた分野に限っての問題意識でもってお集まりになっている方が多いのではないでしょうか。しかし、雇用・労働は重要なテーマではありますが、その雇用・労働における規制緩和に異を唱えようとするみなさん方は、同時に消費者なのであり、その消費者であることの中身とはいったいどのようなものでしようか。仮にみなさん方が日々、単にモノの値段が安ければいいのだという消費行動、あるいは、何かといえば便利な車で行動する、というような生活スタイルを日常のものとしておれば、そのような生活行動が「消費者主権論」を勢いづかせている訳です。

 ここに、『岩手日報』という地方紙の全面広告があります。九七年六月三日の紙面です。私はここのところ全国の商店街をずっと歩いており、むろん、この盛岡の街にも行ってまいりました。いまその盛岡で何が起こっているでしょうか。

 この全面広告は「盛岡の街を守りたい」、という訴えです。いったいだれから街を守りたいのか。巨大ショッピングセンターの進出からです。みなさんも消費者として日常的に買い物なさるでしょう。クルマを飛ばして郊外の超マンモスのショッピングセンターへ出かけるでしよう。その巨大ショッピングセンターがいま境制緩和の名の下で、日本全国で何をしようとしているでしょうか。

 この全面広告には、樹と水の都、盛岡を守りたいと書いてあります。「みんなが育んできた美しい町が巨大ショッピングセンター(SC)の進出で失われようとしています」「あまりにも無謀な大きさです」「言わば、既におなかが満ちている赤ちゃん、その口に、無理やり三本の哺乳瓶を突っ込むようなものです」、と書いてあります。内容を読みますと、とてもいい文章です。

 何が起ころうとしているのか。状況を紹介しましよう。計画によりますと、東北自動車道のインターチェンジに沿って、三つの巨大なショッピングセンター、が生まれようとしているということです。たとえば、その内の一つ、ダイエーのショッピングセンター計画の大きさは、売り場面積だげで一〇万平方メートルです。残りの二つのSC(ショッピングセンター)を合わせまして、合計実に一八万平方メートルです。一八万平方メートルの売り場面積が、どれほど大きいものか。少しでも事情に明るい人ならたちまち仰天するでしょう。これまで、盛岡の商圏において営業を営んできた小売店は全部で四〇〇〇店を超えます。その四〇〇〇店の売り場面積の合計が、一五万平方メートルです。四〇〇〇店の合計面積を二割以上上回るほどの巨大なショッピングセンターが、しかも車を使わなければ行けないような郊外に、三拠点もできる。私は、そのなかの一つに、現地まで行ってまいりました。

 盛岡の方々は、岩手山(盛岡市北部、標高二〇四〇メートル。岩手富士とも呼ばれる)を、とても愛しています。私たちがまいりましたときも、山の頂上の辺りは、黒味を帯びた夏の雲ですね、夕立でも降るんでしょうか、夕立雲の垂れこめる風景の中の岩手山は大変に美しい姿でした。その岩手山を遠望しながら広い国道に沿って、豊かな田んぼがどこまでも広がり、いまを盛りとばかり早稲が、頭を垂れて黄色く色付いておりました。こんな素晴らしい風景の、そのどまん中に巨大ショッピングセンターができる訳です。その田園地帯は実は巨額の税金を投入して育んできた農業振興地域です。その田んぼをすべてアスファルトで埋め尽くし、最低五〇〇〇台の駐車場を造る計画になっております。盛岡市街地から車でわずか一五分位の地点です。

 市民は、盛岡には盛岡の伝統がある、宮沢賢治の碑が至る所に見られるような街の、そして独特の雰囲気をもつ商店街が危機感に襲われ、一般市民もまた、これに歯止めをかけたい、街を守りたい、と訴えるのは当然のことではないでしょうか。

 規制緩和を主張する人々は、「消費者主権」、「消費者の利益」という言葉を大々的に叫びます。零細な小売店が複雑な流通経路を経てモノを売るから日本は高コスト体質になるんだ。だから、中小零細な小売店の集合体である商店街など早く潰してしまえ、大規模ショッピングセンターに集中するほうが、日本の高コスト体質の解決にプラスになると広言しています。その論拠の一つが、小売店の生産性の低さだということです。

 やはりNHKの番組で、私はある規制緩和論者と討論致しましたけれども、その時、彼が持ち出してきたデータは、多くがこの生産性。国際的に見て、日本の流通業界の生産性がいかに低いか、というものでした。

 私は、では、あなたのおっしゃる生産性の数値の中に、何が入っていて、何が入っていないでしょうか、と反論したわけです。たとえば、地域の商店街は、過去、どのような形で地域社会とつながってきたでしょうか。たとえば祭りをやる、お御輿を担ぐ、これなど生産性の数値からすれば、マイナスばかりです。私が今住んでおります地域におきましては、いまだ御用聞きがあります。電話によって、御用聞きをする、あるいは奥さんが午前中、住宅街のお得意さんを歩いて、その日の注文をとってきます。そして、魚の半身一枚、夕刻に届けて来る。私は別にその事だけが大事だといっているのではありません。そのような地域社会をケアする、という営みは、生産性という数字の中のどこにカウントするのか。地域杜会に貢献すればするほど生産性などという数値はマイナスになってしまう。地域の商店街の果たしてきた社会的役割について、そのような経済学者はどう考えているのか、それを問うているのです。以上のような現実は、経済学者のいう生産性という数字のどこに入ってくるのでしょうか。

 再販制の問題を検討する公正取引委員会においても、多くの人々は、「新聞再販は消費者の利益に反する」といいます。ではいったい消費者とは誰なんでしょうか。

口を開けば、消費者の利益ということを正義の御旗として押し立てますが、盛岡の事例からも分かりますように、いま消費者と生活者、消費者と市民が、対立しているのが現実ではないのですか。

 こうした集まりで、いつも思うことがあります、行政が縦割りでタコ壷だ、といいますが、市民運動もまたタコ壷ではないのか、と。環境は環境、労働は労働、教育は教育。みんな分かれてバラバラに孤立しています。それでお互いに、俺たちだけが大変なことをやってるんだ、と思い込んでしまう。

 インテグリティという言葉があります。全体的な整合性という意味ですが、私たちの思想、行動もこのインテグリティをもたなければ、結局、やられてしまうでしょう。もし規制緩和に異議を唱えるのであれば、雇用・労働という限られた平面だけでどれほど大きな声で叫んでみても、最終的には押し潰されてしまうでしょう。


大震災前の「岩手日報」より抜粋引用・・・・・・

これが地方都市の現状です。

過日、上毛新聞でもトップで、「高崎市栄町再開発」が報じられていた。

「角を矯めて牛を殺す」

富岡新市長の発案だとかだけど・・・・・・

そもそも栄町付近には商店街、商業ゾーンではない。

それは再開発ではない、一体なんなんだろうか ???

シャッター通りと、コインパーキング・・・・・

確実に、旧商店街、商業ゾーンは壊滅する。

【壊滅する商店街】
盛岡市の場合





Posted by 昭和24歳  at 08:59 │Comments(2)

この記事へのコメント
大店法の規制緩和という社会実験をやってみて、どないでしたか?

外資系スーパーだって撤退したんだよなぁ。
ハイパーマーケットを地盤にして、都市計画すると、いっときは流行るけど、デカいハコものの中そのものが、ヘタするとシャッター通り化します。J・ボードリャール先生、おなつかしや。消費社会って構造的に神話作用でウゴウゴしてますな。

売れない店はガンガン撤退・撤去。んでなんだかな~のテナントをはめ込んだりする。そしてそこの店長やバイトにモチベーションがパッパラ~なケースが大部てなことで…またしてもサヨナラ没。どんどん出店する店のブランドバリューが下落していくんですね。

結局、郊外に浮いたタイタニック号だ。

さういふものが、我が家のちよいと南にあります。
Posted by 忠やん at 2011年07月10日 21:19
>寅●さん
>つまち、商店街が大衆からメルトスルー(-_-;)
>いつもテポドンじゃないっすかぁ(-_-;)

ザッツ・ライトです。尚且つ大衆が商店街を見捨てた。という相互に裏切りの街角(by甲斐バンド)。

「群馬は車、大好き県」ですね。まぁ移動する自由を堪能しています。しかしそれによって、公共交通網は衰退した。今後の高齢化社会においては、〈中略…といいつつ、老人の運転は危険…〉言わずもがな。

「♪遠くへ行きたい」ってんなら、思い切り贅沢しましょう。日常茶飯事の買い出しでやるのは、単なる遠出アディクトみたいですね。

歩ける範囲内をCITYって言ったんですって。
Posted by 忠やん at 2011年07月12日 03:10
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