2008年08月23日
古い話ではない・・・・・
妖しいダイヤモンドの輝き
ラ・フォンテーヌの寓話『かしこい動物たち』
日本の98年は次のように明け暮れた。
3月、賢いはずの銀行家が金繰りに困っていた。すると日銀総裁や大蔵事務次官をはじめとする金融危機管理委員会の委員たちは、
「困っているなら、銀行に金をあげればいいだけだ」
と、税金から大枚をプレゼントした。
その金をもらった銀行家たちは、使い途を知らなかったとみえて、ゼネコンに横流ししたらしい。
金を受取った彼らは、でっかいリゾート・ホテルや高層ビルを建て、海の上に橋をつくり、住民が「もういい」と言っても、
飛行場や高速道路までつくりあげ、川があるとダムをぶったて、河口を見ると堰を建設し、干潟があるとすぐに埋め立てた。
特に3月ごろ、失業者を使って、町中に穴を掘った。
その結果、過去6年間で、緊急経済対策や総合経済対策や円高対策と言って、66兆6000億円をつぎこんだにもかかわらず、銀行家は金に窮していった。
そこで国は。もう一度救済しようとばかりに、4月になって16兆6500億円を奮発した。
合計83兆2500億円を使った勘定になる。
これで世の中がうまくいったわけではない。外国の投資家は日本には金が余っていると読み、仲間を集めて相談した。
「日本の銀行は金利が低いから、金を借りて、それをアメリカやヨーロッパにもってゆけば利子が高いからもうかるぞ」と。
「兜町で空売りすればいい」と。
空売りとは、東京証券取引所で取引されている株という紙きれを、銀行や保険会社から借り受けて叩き売る行為である。
当然その株が安くなる。すると外国人投資家は、安くなったその株をもう一度買い集めてから、借りた銀行家に紙きれを返す。
高い値段で売って、安い値段で買い戻すのだから丸もうけであった。
そのため長銀(日本長期信用銀行)は困り果てた。空売りされて“紙きれ”のように安くなった紙が、自分の銀行の株だったからである。
前年には山一證券がつぶれ、今度は「長銀がつぶれる。長銀がつぶれる」と、誰もが騒いだ。
外国人投資家はまた、株価操作という手品もしてみせた。
兜町で、株価を上げたり下げたりするゲームだ。値段が上がれば誰しも喜んで買いにくるが、下がれば誰もが売りにかかる。
したがって外国人投資家が買えば株価は上昇し、上昇したところで外国人投資家が売り逃げる。
すると株価が急落するので、外国人投資家は再び安値の株を買いに転ずる。
このくり返しが延々と続いた。大蔵省や日銀の幹部はそのたびに株価を維持しようと大金をつぎこんだ。
「国民の年金があったはずだ。財政出動だ」
と言って、これまでと合わせて90兆円もの金を使ったのである。しかし、やはり外国人投資家にはとても勝てず、年金の資金がどんどん減ってしまった。
失業者が町にあふれ、
「郵便局や銀行に預けておくとなくなるから、タンスか金庫に入れておこう」
と、買い物もやめ日本人は金庫ばかり買うようになった。
それでも手をゆるめない外国人投資家は、たちまち円高ドル安にして、
「アメリカの国債をドルで買えば、高い金利がつくぞ」
と日本の投資家を挑発した。
日本人は、まただまされているとも知らずに、それを奪うように購入した。その金でアメリカ人はますます金持ちになり、贅沢な生活を続けた。
やがて11月に入って長銀が破綻した。橋本政権を継いだ小渕政権は、長銀を国有化したあと、緊急の経済対策として新たに24兆9000億円をばらまくことにした。
そのためバブル崩壊後の経済対策の合計額は、国家予算をはるかに超える108兆1500億円に達した。
銀行家はそれを見て安心したか、借金を取り立てるという自分の仕事をすっかり忘れたようだ。
ゼネコン関係のフジタと藤和不動産は借金を棒引きにしてもらい、暴力団の稲川会会長だった石井進と懇意だった青木建設も借金を棒引きにしてもらい、長谷工は、
「4000億円をチャラにしてやろう」
という気前のいい銀行家のひと声で助かった。
日本人はどれほど苦しくなっても、みんなで助け合って生きてゆこうとする気概が人一倍強いのである。
そうこうするうちに12月に入って日債銀(日本債権信用銀行)も、どか~んと音をたててぶっつぶれた。
「なに大丈夫、また国有化してやればいいんだよ」
と、大蔵大臣がにこにこして言ったものである。
日債銀は昔から政商児玉誉士夫と密着し、ワリシンという債券を28億円も集めた金丸信と柔道の寝技でよく遊んだことがあり、
福島交通にも金を貸しっぱなしで、実に幅広く交遊関係があったが全て不問にされた。
しばらく帳簿をしまっておき、国民が忘れたころに消費税を大幅に引き上げ、別の方法で巨額の税金を集めて、
長銀や日債銀を救済するのだから、国民が多少怒らなければならないが、国民は至極冷静であった。
日債銀が国有化されたので、その株を1億2103万5000株保有していた日本生命保険は、
一株の値段が158円だったので総額191億円も損失を出したが、第一勧銀らと共に、いささかもあわてずにいたものである。
というのは、そのほか、むつ小川原原発、北東金庫、苫東開発、日本開発銀行、麻布建物、北海道拓殖銀行(拓銀)、みどり銀行など、
国民には数え切れないほど救済資金が必要とされ、郵便貯金を使わなければならないほどになっているのである。
高齢の政治家たちは、自分たちがそれほど長生きしないので、内心ではどうでもよくなっているとしか思えない。
しかしゼネコンの借金を棒引きにしたあと、銀行の火の車は、現在も続いている。国から何度金をもらっても、
ゼネコンや暴力団やリゾート開発の人間がそっと裏口にやってきて、
「もう少し貸してくれ。くれんと騒ぐぞ」
と言い続けているからである。
「実はもっと困ってるんだ。また不良債権が増えて」
銀行はいまだに高級で、ボーナスも退職金も年金も群を抜いている。が、町の人間は、いつまでもせっせと働き続けている・・・・・・
広瀬隆著『パンドラの箱の悪魔』より引用抜粋。
ラ・フォンテーヌの寓話『かしこい動物たち』
日本の98年は次のように明け暮れた。
3月、賢いはずの銀行家が金繰りに困っていた。すると日銀総裁や大蔵事務次官をはじめとする金融危機管理委員会の委員たちは、
「困っているなら、銀行に金をあげればいいだけだ」
と、税金から大枚をプレゼントした。
その金をもらった銀行家たちは、使い途を知らなかったとみえて、ゼネコンに横流ししたらしい。
金を受取った彼らは、でっかいリゾート・ホテルや高層ビルを建て、海の上に橋をつくり、住民が「もういい」と言っても、
飛行場や高速道路までつくりあげ、川があるとダムをぶったて、河口を見ると堰を建設し、干潟があるとすぐに埋め立てた。
特に3月ごろ、失業者を使って、町中に穴を掘った。
その結果、過去6年間で、緊急経済対策や総合経済対策や円高対策と言って、66兆6000億円をつぎこんだにもかかわらず、銀行家は金に窮していった。
そこで国は。もう一度救済しようとばかりに、4月になって16兆6500億円を奮発した。
合計83兆2500億円を使った勘定になる。
これで世の中がうまくいったわけではない。外国の投資家は日本には金が余っていると読み、仲間を集めて相談した。
「日本の銀行は金利が低いから、金を借りて、それをアメリカやヨーロッパにもってゆけば利子が高いからもうかるぞ」と。
「兜町で空売りすればいい」と。
空売りとは、東京証券取引所で取引されている株という紙きれを、銀行や保険会社から借り受けて叩き売る行為である。
当然その株が安くなる。すると外国人投資家は、安くなったその株をもう一度買い集めてから、借りた銀行家に紙きれを返す。
高い値段で売って、安い値段で買い戻すのだから丸もうけであった。
そのため長銀(日本長期信用銀行)は困り果てた。空売りされて“紙きれ”のように安くなった紙が、自分の銀行の株だったからである。
前年には山一證券がつぶれ、今度は「長銀がつぶれる。長銀がつぶれる」と、誰もが騒いだ。
外国人投資家はまた、株価操作という手品もしてみせた。
兜町で、株価を上げたり下げたりするゲームだ。値段が上がれば誰しも喜んで買いにくるが、下がれば誰もが売りにかかる。
したがって外国人投資家が買えば株価は上昇し、上昇したところで外国人投資家が売り逃げる。
すると株価が急落するので、外国人投資家は再び安値の株を買いに転ずる。
このくり返しが延々と続いた。大蔵省や日銀の幹部はそのたびに株価を維持しようと大金をつぎこんだ。
「国民の年金があったはずだ。財政出動だ」
と言って、これまでと合わせて90兆円もの金を使ったのである。しかし、やはり外国人投資家にはとても勝てず、年金の資金がどんどん減ってしまった。
失業者が町にあふれ、
「郵便局や銀行に預けておくとなくなるから、タンスか金庫に入れておこう」
と、買い物もやめ日本人は金庫ばかり買うようになった。
それでも手をゆるめない外国人投資家は、たちまち円高ドル安にして、
「アメリカの国債をドルで買えば、高い金利がつくぞ」
と日本の投資家を挑発した。
日本人は、まただまされているとも知らずに、それを奪うように購入した。その金でアメリカ人はますます金持ちになり、贅沢な生活を続けた。
やがて11月に入って長銀が破綻した。橋本政権を継いだ小渕政権は、長銀を国有化したあと、緊急の経済対策として新たに24兆9000億円をばらまくことにした。
そのためバブル崩壊後の経済対策の合計額は、国家予算をはるかに超える108兆1500億円に達した。
銀行家はそれを見て安心したか、借金を取り立てるという自分の仕事をすっかり忘れたようだ。
ゼネコン関係のフジタと藤和不動産は借金を棒引きにしてもらい、暴力団の稲川会会長だった石井進と懇意だった青木建設も借金を棒引きにしてもらい、長谷工は、
「4000億円をチャラにしてやろう」
という気前のいい銀行家のひと声で助かった。
日本人はどれほど苦しくなっても、みんなで助け合って生きてゆこうとする気概が人一倍強いのである。
そうこうするうちに12月に入って日債銀(日本債権信用銀行)も、どか~んと音をたててぶっつぶれた。
「なに大丈夫、また国有化してやればいいんだよ」
と、大蔵大臣がにこにこして言ったものである。
日債銀は昔から政商児玉誉士夫と密着し、ワリシンという債券を28億円も集めた金丸信と柔道の寝技でよく遊んだことがあり、
福島交通にも金を貸しっぱなしで、実に幅広く交遊関係があったが全て不問にされた。
しばらく帳簿をしまっておき、国民が忘れたころに消費税を大幅に引き上げ、別の方法で巨額の税金を集めて、
長銀や日債銀を救済するのだから、国民が多少怒らなければならないが、国民は至極冷静であった。
日債銀が国有化されたので、その株を1億2103万5000株保有していた日本生命保険は、
一株の値段が158円だったので総額191億円も損失を出したが、第一勧銀らと共に、いささかもあわてずにいたものである。
というのは、そのほか、むつ小川原原発、北東金庫、苫東開発、日本開発銀行、麻布建物、北海道拓殖銀行(拓銀)、みどり銀行など、
国民には数え切れないほど救済資金が必要とされ、郵便貯金を使わなければならないほどになっているのである。
高齢の政治家たちは、自分たちがそれほど長生きしないので、内心ではどうでもよくなっているとしか思えない。
しかしゼネコンの借金を棒引きにしたあと、銀行の火の車は、現在も続いている。国から何度金をもらっても、
ゼネコンや暴力団やリゾート開発の人間がそっと裏口にやってきて、
「もう少し貸してくれ。くれんと騒ぐぞ」
と言い続けているからである。
「実はもっと困ってるんだ。また不良債権が増えて」
銀行はいまだに高級で、ボーナスも退職金も年金も群を抜いている。が、町の人間は、いつまでもせっせと働き続けている・・・・・・
広瀬隆著『パンドラの箱の悪魔』より引用抜粋。
Posted by 昭和24歳
at 19:17
│Comments(3)
そういう連中の集まりだから、外の敵には恐ろしく弱かったと…
実際に攻撃されて判明した事実…
でも判明してみたら、もうときすでに遅し…
しかし日本の銀行も、竹中某とか小泉某が敵に回るとは思わなかったでしょうね。
金融再生プログラムの木村某も、プンプン匂ってきますし…。
みずほ銀行が増資して国営化を逃れたときの竹中某の顔が忘れられない。
悔しそうなコメントに笑いが止まりませんでした。
これからの銀行、個人向けの預金サービスは低下する一方でしょう。
それに引き換え、投信や外貨預金をかなり勧めてくるようになると思われます。
銀行が公共の役割も担っていた時代がだんだんと終わりを告げる時期が来たんですかね。
パパ
そういう連中の集まりだから、外の敵には恐ろしく弱かったと…
実際に攻撃されて判明した事実…
でも判明してみたら、もうときすでに遅し…
しかし日本の銀行も、竹中某とか小泉某が敵に回るとは思わなかったでしょうね。
金融再生プログラムの木村某も、プンプン匂ってきますし…。
みずほ銀行が増資して国営化を逃れたときの竹中某の顔が忘れられない。
悔しそうなコメントに笑いが止まりませんでした。
これからの銀行、個人向けの預金サービスは低下する一方でしょう。
それに引き換え、投信や外貨預金をかなり勧めてくるようになると思われます。
銀行が公共の役割も担っていた時代がだんだんと終わりを告げる時期が来たんですかね。
パパ
仰るとおりです。
それらの答えは戦前戦後の歴史の中に全て経験済みであるのに・・・・・
国民覚醒しませんね。銀行の不良債権もほとんどが少額預金者の預貯金です(笑)。
高額預金者、数億円の預貯金は別口で手厚く保護され、
少額預金者の本来の利息までそちらに回っています。
群銀の上毛新聞全段の外国ファンド投信の広告、ゲロがでますね正直・・・・・!!