2019年10月20日

老人と少年

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老人と少年

時代を囀り、瓦礫の中に僕等は始まった。

昭和32年、北海道北見から高崎の炭鉱(炭田)へ。
同じ頃、下久保ダム建設で埋没のため「一部落」高崎の観音山丘陵北端に入墾。
「母子寮」というのもあった…日本の至る町にあったのだろう。
僕等の同世代の子どもたちが殆どだったので、父親が「戦死」したという事情ではないようだった。
敗戦の瓦礫の中、ただ「生きる」ことだけに生きる母と子ども。

満蒙開拓団、所謂「満州帰り」。新婚で国に誘われるまま満州に渡り、そして敗戦。
命からがら、乳飲み子を残し焦土を踏んだ若い母親たち。

それが、僕等の「母世代」です。

そのまま、夫は「お国の三百里」の土になったやも知れず・・・
30代そこそこの「母達」の明日知れぬ暮らしが、昭和20年8月15日を境に始まった。
僕の世代、年子で4人兄弟、姉妹は当たり前。

街には廃墟の中にもバラック仕立ての2軒長屋がいっぱいだった。
水道、洗い場は「共同」。大人達の心は「荒み」きっていた。
大人たちは、ただ敗戦という理由に180度の価値観の変貌に世間を忌み、嫉み、妬む。

そんな時の、松川事件であり、三河島事件であり、三鷹事件であり、帝銀事件だったのろう・・・
街は、喧騒に溢れ、怒声、罵声の渦・・・全ての食糧が「配給」。

そんな中、僕等は湧くように生まれたのだった。

忘れてはいまいか、かつてのあの時代の、その世情を。
今のように政治に不満を云うどころの騒ぎではない。
国民が食うことに、生きることだけに精いっぱいだった、そうした世情の責任を回避したまま、戦争責任者たちはこの国を売り、狡猾にも再び、この国を私腹し始めた。

伝播されているように、A級戦犯の「巣鴨プリズン」謎の出獄である。
公職追放されていた、その時分、40代からの時代の支配者たちは見事に復活し占領政策に、新憲法下、普通選挙でこの国を誑し始めた。

中国革命、朝鮮動乱で米国の後方支援、兵站基地として、ものの見事に他国を犠牲に「経済復興」を遂げ、
後にも先にも、猿芝居「政・官・財」癒着の「55年体制」を、物言えぬ民草を踏みつけて謀った。
そして今日、国家は厚化粧のなか、創られた「豊かさ」も崩壊し世相は変わったかに見えるが世情は何らの変化を見ない。

あの時のままだ・・・

逝った人の、逝った人の世襲者たちの「潜み笑い」が囀り。

あの時の極度な貧困化に湧くようにして生まれた世代が「団塊の世代」と煽てられ、
醜いほどの消費、消耗文化を弄んだ、その「ツケ」の精算はまだ済んでいない。
それは、湧くようして生まれた、そしてその一世代上の戦中生まれ世。・
いわれる、「4人に一人」がその次世代、次々世代に集ろうとしているがそれでは持つまい。

精算しないまま逝くのですか。「醜塊」を遺したままで・・・・・

せめて、自分の「戒名代」くらいは、今、遺しておきましょう。生きているうちに。
葬儀一式400万円くらいが相場とか。
そして、あの世への戒名代、「税務署がうるさいもので」と20万円、40万、70万円。
「その先はお気持ち次第です」とお釈迦様の使途が品書きをそっと出す。

僕等世代、合わせたら、戒名代だけでも、ほぼ、3兆円・・・お寺さんがお待ちです。
別に神仏を冒涜するつもりはありませんが、仏になるのに(仏教のみ)借り物の祭壇、儀礼に400万円は・・・
おくり人の皆様には申し訳ありませんが、その莫大なおカネ、もっと違う使道もあるのではないでしょうか。

葬儀社の、病院への売り込み合戦も壮絶らしいですからと報道特番。
やはり其処でもその地の有力者(議員)が跋扈するという。

せめて、人としての最後くらい、
いや、死んでまで「商品」にされたのではたまらない。

いつのころから、そういう死人(しびと)を商品にする世相になったのか。
僕が知る限り、僕の祖父母の葬儀(昭和30年頃)はただただ、それはしめやかにであった。
その、高度経済成長は戦後の清貧、人々の心を塗りつぶすようにして拝金した。

御殿のような貸し葬儀場・・・

どう考えたらいいのか、人生の終わりと、人生の始まり、冠婚葬祭が同じ商い。
他所の国のことは詳らかではないが、この国のその事情を知るとたいそう驚かれるそうだ。

そして、少子高齢化、冠婚事情は曇りのち雨だが、葬祭事情は晴天つづき・・・
今や、葬祭産業の経済規模は2兆円。今後ますます活況ですとか。

僕が死んでも、位牌もいらない、墓も要らない、石塔もいらない・・・
灰にして、この「星」の土に返してくれればそれでいい。

そして、僕のことなんか、とっとと「忘れて」幸せに生きてください。

老人と少年




Posted by 昭和24歳  at 07:21 │Comments(0)

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