2009年03月02日

昭和の隠れ家・・・・・

そう――――

そんな店はなにも小奇麗である必要はない。

できれば、灯りは「松下式」二股ソケットの紐付き2段切替スイッチあたりが隙間風に触られていると嬉しい。
それにアルマイトの灰皿と箸も使い古しの年季の入った塗りのやつ・・・・・・・





更に欲を言えば格子の障子窓には雨露を忍んだ幾重もの染みでもあれば肴には困らない。
そして、開け閉めに一工夫させられる滑車の引戸は・・・・・・・
もちろん取っ手の所は庶民の血と汗と涙が染み付いて黒光りしているやつだ。

そして時期でも良ければ、開け放たれた障子、格子の隙間から知った顔がちらほら。
それでもどう云うわけかそれなりに気を遣い開けかけた暖簾を避けて具合のいい席を選る。

「ここが空いてるよ」

と、常連だろう何気に気安い。

そう云った店は団体で来る客はそうはいない・・・・・・・・
大概が一人か二人と決まっている。
それでも3人寄らずとも、そこそこに仕上がってくるとつまらない揉め事を肴に結構賑やかになる。
当然、贅沢なブランデーやウイスキーなどは無い。精々が「角」ではないだろうか。
そんな店の中は口角に泡を飛ばした五月蝿さが日々の溜飲を下げる・・・・・・・

蝿取り紙に吸い付かれた蝿が裸電球にに透けてジタバタしている。
贅沢だろうか―――
そうかもしれない。否、贅沢である。

本当に贅沢であった。

今はもうその店はない―――

「中熊」。

僕らは、「チュークマ」と呼んでいた・・・・・・
高崎の夜の政官財界奥座敷として名を馳せていた「宇喜代」の路地を挟んで、その辻向かいに「中熊」はあった。
「宇喜代」がお偉方の奥座敷なら、「中熊」は労働者の奥座敷。それにしても棲み分けの良い時代ではあった。

「中熊」は亭主は厨房で肴を、おかみさんはカウンターで鍋守。
何と言っても、一番のウリ「モツ煮込」は相当に年季の入った仕込であることはその味が証明している。
器は瀬戸物、箸はけして割箸などではない。ご案内のように上物ではないにしろその塗り箸の持て成しには安心が嬉しい。

それに、季節物の「漬物」、これが絶品である!!

当然、夏場には茄子と胡瓜、カブ、の糠漬けだ。そして冬場は白菜漬けが・・・・・・・
申し訳ないが、これにその「煮込み」があれば、「宇喜代」とて敵うまい。
とは言うものの、「宇喜代」とやらに上がれるほどの身分でないので、それは只の僻みかもしれないが。

何しろ、「宇喜代」とやらで言ったどんなものを飲ませて食わせてくれるのかは・・・・・・
想像もしたことが無いし、できないのだから。

酒の銘柄は憶えていない・・・・・・と云ううよりそこは「中熊」で、「チュークマ」と呼ぶくらいだから、
呑むのは焼酎、ご存知「ウメ割」である。これがまた矢鱈と逸品である。

分厚いカットグラス・・・・・そんな気取った物ではないそれは「コップ」。
皿受けに零れても尚、並々と注いでくれる・・・・・・

中学で習った・・・?

小学校だったかのそれ、「表面張力」に嬉々としながら・・・・・・
まず、両手を膝の上に置き徐を装いグラスに口づけ、「チューッ」っとイクッ、それが作法だ。

まさに、「チュークマ」。

途中、溢れ零れた皿受けの「ウメ割」を・・・・・・・・
まるで子どもの頃に駄菓子屋で「さぐり」に中った時のような気分でコップに戻す。

<少し増えている・・・>
 
裸電球に透かして量を確かめ「ニンマリ」。

「チュ―クマ」のもうひとつの売りは「濁り酒」だろう。誰とはなしに酒飲みが度胸試しのつもりでそれを覚える。
変な話、胃カメラの時の「バリュウム」のような感じが最初の憶えである。
慣れて来ると確かに美味いに違いは無いが兎に角、足腰に来るのが騒ぎである。僕は2杯目は遠慮する事にしていた。

そんな「チュークマ」のそれは、昭和45年・・・・・・
僕が当時隆盛の「キャバレー」でドラムを叩いていた、そんな時代の話である。




ところで明日は“雪”の降り続く天気予報。

ともだち村“晴”

最高のシチュエーションではないでしょうか・・・・・・



Posted by 昭和24歳  at 21:03 │Comments(6)

この記事へのコメント
雪降る中を、ひたひたと忠臣蔵の仇討ちでもなし、高倉健の殴込みでもなく、雛祭りとは。
Posted by mitukuni at 2009年03月03日 00:24
大胆にも、そんな「宇喜代」で私は結婚披露宴を開いてしまいました。

しかも、会費制で・・・。

若いって、怖さ知らずでよかったなぁ・・・。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎 at 2009年03月03日 08:35
そういった場所が似合う男に、早くならなきゃなと思います。
もっともっと男を磨かなきゃ!!

すいません、本日ですが教育相談が入りまして、
6時半には少々遅れてしまうかもしれません。
ご了承いただけたらと思いますm(__)m
Posted by くみちょう at 2009年03月03日 10:57
mitukuniさん・・・・

>雪降る中を、ひたひたと忠臣蔵の仇討ちでもなし、高倉健の殴込みでもなく、雛祭りとは。

内裏祭り・・・・・

雪はときの恵みでは。
Posted by 昭和24歳昭和24歳 at 2009年03月03日 11:51
迷道院高崎さん・・・・・

>大胆にも、そんな「宇喜代」で私は結婚披露宴を

粋な黒塀見越しの松・・・・・
確かそんな趣ではなかったでしょうか。春日八郎のヒット曲「お富さん」発祥の柳川町とか。

迷道院高崎さん・・・・・そうですか、「宇喜代」で披露宴を。
僕の先輩は明治天皇ゆかりの「暢神荘」でした。
ずいぶん昔ですけど、某広域暴力団の新年会で「バンド演奏」しました。
カラオケのない時代でしたので、恐怖の「兄弟仁義」、「傷だらけの人生」でした(笑)。
Posted by 昭和24歳昭和24歳 at 2009年03月03日 11:59
くみちょうさん

>6時半には少々遅れてしまうかもしれません。

「ふらり」とおいでください・・・・・

くれぐれも運転にはご注意を!!
Posted by 昭和24歳昭和24歳 at 2009年03月03日 12:00
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